クズ

実は、国内代理店の手配する海外ツアーに全部のっかって行ったのはこれが2回目で、自分でそうしたのは初めてだったんですよ。いやー、強烈だった。海外デビューする人達の群れが。
ある日のツアー(ABCツアーとしましょう)で、夕食を考えるのが面倒だったのと、そこそこ美味いものを食いたいってのもあって、ツアーオプションで予約を頼めるおすすめレストランをガイドブックから前日に選んでたんですよ。それも中華の有名店じゃなくて、ガイドの最後の方にある西欧風の小さな店を。で、ツアー開始時にガイドさんに予約をお願いしたと。ガイドさんは昼には予約できるかわかりますと言って、ツアーメンバーが昼食を摂っているときに「サイトさーん、20:00からは予約がいっぱいだったのですが、19:00なら取れましたよ」と教えてくれたんです。
夕食の時間が近づいて、レストランの近所を時間まで散歩していたら、そのレストランの前に見た顔のカップルが居るんですよ。ィヨメが「ああ、あれだ」とまたエラそうに(笑)言う。なんだそれと聞くと、うちが予約したのを横で聞いていて、後から「うちも頼みます」と言っていたのを見たと。まあこのときは、いちいちチェックすんな性格悪いなおまえ、マネしたっていいじゃねえかと笑っておしまいだったんです。がー。
レストランに行く。テーブルが"(ABC) Saito"で予約してあるので座る。店主が「ああどうも予約してくださってありがとうございます」とやってきて頼んだワインを開ける。ずいぶん丁寧だなと思いつつ、おいしく料理をいただく。が、どうにもさっきからレストランに「ABC、やまだ」だの「ABC、たけもと」だのと言う電話がかかってきてうるさい。周りを見ると、他のテーブルが全部ABCツアーの予約で一杯だ。前菜が終わった頃には、周りはさっきまで同じツアーだった連中ばっかり。カブるか?ここで全員カブるか?フカヒレ食ってろっつの。なるほどね、オイラが最初に入れたら次々予約が入ったからアリガトゴザマスな訳か。
いやいや、おいらだってデビューしたてはそうだった。慣れていそうな人の後をついてったし、彼らがやってるように、訳もわからずやってみた。やたらでかいバッグで行って馬鹿にされたりもした。現に他人様から借りた携帯までなくしてヘコんだりしている(その節はご迷惑をおかけしました)。テメエだって慣れてねえくせに知ったツラで「あんた今夜どうすんの、アタシ知らないからね、オトコでしょ」なんつー性格ブス嫁に掴まったら、そういう方法しかないでしょうね。そういう馬鹿は海に沈めて帰るのがいいと思いますが。
まあツアーなんだしカブるのはしょうがないとして憮然と皿を進め、アジア風にココナツミルクカレー味にした海鮮や、トマトと香菜が利いたリゾットを食っていると(おいしかったです)、これまたABCの、ルックスが全員エマージェンシーな女子4人組が「なんかココナツミルクとかアジアでー、違うっていうかー」「ちょっとアテシ香菜苦手なんだけどー」といいつつアイスコーヒーを飲んでおる。だったら最初に言え。言えねえなら黙って食うか金置いて帰れ。ここは間違いなく、どうやったってアジアだろうが。ほんとうにぶすはあたまがわるい
地元の、20代の、ちょっとデイトに頑張った風の男子と女子が、食事を早々に切り上げて出ていく。ちらちらと、明らかにABCの自己の無い連中を睨みつつ、でもいや睨んじゃいけない、という顔をしながら出ていく。ごめんな。せっかくのデイトだったのに。横でこんなクズみてえな連中が場も読まず「なにこれー」と大声出して、料理が冷めるのも構わずいつまでもバシャバシャVサインで写真撮って(何に勝ったんだ?)、あげく「これは苦手でー」っつって残してたらなあ。
しかし、ここで更に地獄の蓋が開くのだ。ずっと気になってたんだよ。すぐ横に、30人入れば十分な店内なのに10人くらいのテーブルが予約してあって、19時からなのに40分以上来てなくて、やっぱり、ABCって書いてあるのが。
南シナの瀟洒な店内をぶち壊すように「はろー、はろー、おーけー、おーけー」と響く胴間声、に続いて壮年のご一行10名登場。なにがおーけーなんだかさっぱりわからねえが「おーけー、おーけー」と連呼しつつ席につく。

A「ああ、っとー、メニューは、えーっとー、...なんか読めねえなこれ」(カイガイはなんでも英語で書いてある訳じゃない)
20代女性店員「ノー、サー、ココがドリンクメニューデス」
B「おあ、おれ、チンタオ」
店員「NO、チンタオ。ウチはチュウカリョウリジャナイデス、ワインアリマス」
B「えあ?チンタオねえの?」
A「ああ、交渉しますよ。あー、チンタオ、おーけー、おーけー」(←こいつが一応、一番外国語に強いらしい)
店員「No、ビールナラホカノアリマスヨ」
A「おーけー、おーけー、ちんたお、ある? いえす」
店員「No!!」

いえすいうな。割と中国内からの人もたくさん観ますが、ここまで無礼じゃなかったよ。どこの国にしろ、レストランの店員に対するこういう態度はどうなんかね。喧嘩する用意ありますよ。
しかーし。ここでなんつーんですか、「おいそこのキーセン買ってる調子のおじさん、そこのぶさいくなだけのレディ、主体性のカケラもない君たち、待ちなよ」的な展開で説教アンド解決でもするのが「オレ・漢」な展開、なんでしょうけれども、すでにアラフォーを越える所存のアテクシ、この闇の深さはよーく知っております。こいつらを数人ツブした程度じゃ何も変わらねえ。下手するとゴネやがった上に「なんか変な人に文句言われてー、楽しくなくってー」と言い、現地ツアーに文句つけてカネ払わねえ。それは避けたい。カネだけは全額払わせないといかん。
こいつらは根が誠実な日本人でカネ持ってるから許されるんじゃないんだよ。どこの誰だろうが、こういうヤツらは一生、カネぐらいしか取り柄がねえんだよ。取り柄は十分活用しようぜ。
外にはABC予約のせいで入れない地元の常連さんが7、8人、「どうして今日は入れないのよ」と揉めながら待っている。苦虫を噛み潰す思いでデザートの手作りプリンを呑み込み(おいしかったのに苦い虫の味がした)、サービス料の上にささやかなチップを更に積んでさっさと席を立つ。オイラも偉そうに言ったって、分類はこいつらと同じジャパニーズ。カネぐらいしか詫びる方法がねえ。最初に書いたように物価あんまり変わんねえんだけどさ。
今後、「はじめてのかいがいりょこう」エリアはツアー少な目で行こうと思いました。タイとかコリアとかハワイイとかアメリカとか。たぶんイタリアもやばいよな。