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11月までには-10を切れたい。切れまくりたい。なのでMさんが面白いよと貸してくれた本も投入。

エンジニアのためのWord再入門講座 美しくメンテナンス性の高い開発ドキュメントの作り方

エンジニアのためのWord再入門講座 美しくメンテナンス性の高い開発ドキュメントの作り方

こんな人にお勧め。

  • たぶん書名はITエンジニアを指しているんだろうけれども、エンジニアに全く限らず、仕事などでWordをよく使う人。使わざるを得ない人。
  • 綺麗でスペシャルな1つだけの文書を作るのでなく、業務文書などの、同じ体裁でもいいから整った文書をたくさん作る事が多い人。
  • Wordの機能がありがたいより邪魔な人。使わない機能の方がずっとずっと多い人。
  • コードがあるのにどうして文書を書かなくちゃならないか、実際意味わかんねえ若手プログラマや学生さん。

よくぞ書いてくれた。たいしたもんだ。ここをあえて選んだ着眼の良さと、それを一本にまとめあげた意思と努力がさすがだ。
Wordはもはや、インターネットにおけるWWWブラウザと同じくらい仕事では必須のツールになってしまっているが、なにせ複雑なうえ動作の一貫性も無くて挙動が読めない。あんまりイルカにも先生にも魅かれない(あんまり関係ない)。だからたいていは「なんとなくまあいいか」程度になるまで適当にメニュー選んでいじくってセーブしてポイ、とやりがちなものだ。で、ポイとやっただけの文書を手直しするのも面倒だから更にポイとなる。
で、まあ、適当でポイじゃいいかげんまずいよな、と本屋に参考書を見に行っても、今度はこれまた、あれもできますこれもできますWebもできますクリップアートも足せますと。どういう家に住んでたらそんなにホームパーティーのお知らせとFAXの送付状ばかり作るんだと。しかもワードで。なんて田舎臭いガイド本とは違って、この本は自分が意図するレイアウトやスタイルをいかに簡単に設定するか、どう使えばその設定に沿ってWord文書が作れるかだけに話題を絞り、それだけを丁寧に丁寧に、ダイアログの一個一個まで載せてやさしく説明している。ここが着眼の良さ。メニューに載っていても、ちょっと便利な新機能でも、ユーザが意図しない動作ばかりなら「使うな」と切り捨てるし、ちょっと慣れたユーザならみんな設定しているような設定でも、自分の意図に合わせるうえで便利ならちゃんとページを割いて説明している。
この目的の明確さと精密さを、Wordの設定ダイアログ無間地獄でも失なわずにいるのが、そのごまんといる「ちょっと慣れたユーザ」との大きな違いだ。よくあるでしょう、凝り過ぎてなんだかわからん設定になってて見出しひとついじくれない文書とか、ガチガチに禁止設定してあって文字位置の修正もできない文書とか。まあ上記の田舎ガイドも目的の無いクチではあるな。似たようなガイドはありそうで、ここまでひとつにまとまったのは無い、と思う。このひとつにまとめたところがさすが。
しかし、気にならないところがないわけじゃない。「〜機能は動作がこれこれなので、悪です」などと言う舌足らずの若い向き慣用句がちらほら見えるし、ドキュメンテーションに関する意見はしっかりしているけれども、参考に挙げられているプラグマ本や理科系文書技術といったエンジニア向け書籍から引用した以上の意義は薄い。目的をこれだけ貫徹できるんだから、大事な目的(主題)が借り物でなくても書けるよね。研究チックに言うとサーベイ力は非常に良いんだから、その次ね、と。いやまあ、Wordのサーベイで投げ出した俺に言われたくないでしょうけど(苦笑)。これは今後に期待と言う意味に取っていただきたく。
と書いたって、読んでるかしらねえけど(笑)、オレみたいに投げ出したり、「ソモソモWordなんてボクのシゴトにアタイしない」系の人間が跋扈するなかで、あえて現実のここを見据えて、機能にも溺れず他のツールにも逃げず、一冊にまとめたのはすごいね。なんとなく、ああ、時代は21世紀だなあと思ったよ。「コミュニケーションツールとしてのドキュメント」を主題に置いた、よりにもよって(笑)Word設定の本が、コンピュータの棚に並んでるんだもの。さらば前世紀。