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3月一杯の予定より2ヶ月ちょっと遅れて完了するあたりが、絶妙に仕事の納期っぽくて泣けてますが、全巻読了しましたよ。おめでとうオレ。

完訳 千一夜物語〈13〉 (岩波文庫)

完訳 千一夜物語〈13〉 (岩波文庫)

他の本に行って、思い出してはまた読んで13巻。長かったような短かったような。嘘。通して読むのは実際長いや(笑)。でも、各巻は100ページ程度のお話が数編入っているのがほとんどで(3巻から4巻にかかる三代記が唯一の例外)、どの話も大体独立してるんで、どこから読んでどこで止めても、前の話を忘れてしまっても大丈夫。細く長く楽しむのがいいと思います。あれだ、「ドラえもん」や「サザエさん」みたいなもん。「ドラゴンボール」じゃなくて。
だので、そういうお話のほとんどは内容や登場人物につながりがないんだけども、(たぶん)唯一、ほぼ全巻を通じて登場するのが、教王ハールーン・アル・ラシードと大臣ジャアファル、御佩刀(みはかせ)持ちのマスルールの話。大体は3人で旅の商人に化け、お忍びで町をウロチョロしているとなにかが起こる。旅人に優しくしてくれた貧乏者を助ける場合もあるし、単純に、町のおもしれーヤツに目をつけておいて翌日全員を宮殿に呼び出し、「なんか面白い事、言え」とやる場合もある。そういう細かい手配をしたり、旅人と思ってナメたクチを聞く連中との仲立ちをするのが、教王の信頼厚きジャアファルで、脅しがマスルール。水戸黄門みたいなもんだね。よく似てる。
しかし。この最終巻では、...うーん、上のWikipediaにも書いてあるからいいか。古典だし。
最終巻で、その教王は、マスルールに命じてジャアファルをむごたらしく殺すのです。永遠に生きるジジイ、コーモン・ミトを見慣れた身には衝撃的なラスト。どうやら史実なのですな(Wikipedia見てみ)。なぜまた、という色々な憶測はこの13巻に載ってますのでどうぞ。
それの他にも、前にも書いたが他の国の話と共通するような、例えば鳥が羽を脱ぐと綺麗な娘が出て来たんで、羽を隠して嫁にしたとか(中国にもあったな)、眠り姫そっくりのモチーフもある。こっちの眠り姫は麻糸の切れ端が爪に挟まると眠ります。
ああそうそう、シンデレラもある。こっちのは壷だか花瓶をこすると魔人が出て来て、じゃんじゃか宝石や服を出す。ネズミだカボチャだっつー貧乏くさい話はない。もう要らないっつったら魔人がしまって、また出してくれる。合理的だ(笑)。で、階段を走ってガラスの靴を落とす代わりに、宮殿の庭(タジ・マハールみたいのを勝手に想像するとなおよろしい)をかけて行って、大理石で組んだ池のほとりで、金のアンクレットを落として行く。イイッスネー。おれはこっちの方が好きだ(笑)。
読んでみると末永く楽しめると思いますです。童話などのよくあるダイジェスト版は、程よく長い話の、あまりエログロナンセンスがきつくないあたりを選んで抄訳してあるので、お勧めしません。淫乱な娘は(略)地下にヒヒ(略)からウナギが(略)とか、藁の(略)泥棒(略)おなら(略)とか、大人は完訳をぼちぼち読みましょう。