辰ちゃん、遅れ過ぎです。日劇もジャックもベティもYCSもMGAもまとめて閉館しましたよ(やけっぱち)。横浜地区で、入れ替えだ関連グッヅだポプコンだに邪魔されず、空気の読めないガキもおらず、腰を据えて映画を観られる、ってそれが普通だと思うんだけどもとにかく、そういう場所はすごく減ってしまったよ。
新参の田舎者の癖、だけど思い出を書こう。その無くなってしまった映画館に初めて行ったのはジャックの松田優作特集。就職してこっちに来て間もない頃で、まだフレックスも無いけど残業もなく、定時に出て「野獣死すべし」のスクリーン上映にダッシュ。でもまだコガネチョーなんて行った事がなくて思い切り迷い、結局入れたのはクライマックスのあのシーンから。怒鳴ったり強姦したりのスクリーンを見上げている客は通路までびっしり溢れてて、おじさんのチックの匂いにむせた。以来、何を観ても「今日のジャックの、匂い」をチェックするようになった。
映画が終わるとあの狭い休憩コーナーが満杯になって、その奥のトイレに行くのも一苦労。無理に奥へ入ろうと、目の前の茶髪ネルシャツな今時らしい兄ちゃんをどかそうとしたら、こいつがボソボソっと、小さな声で50絡みの真性おっさんに「..あれ、カッコよかったすね」とつぶやいた。おっさんはくわえ煙草が目にしみるのか、目を細めたまま黙って右手を上に揚げて、二人とも短く笑ってまた煙草を吸い始めた。とても邪魔する気にはなれなくて、なんだか馬鹿みたいに反り返って避けてトイレに行ったっけ(笑)。