コント22号

京急川崎はひどい雨漏りだった。更にホームは強風が雨しずくを巻き上げ、傘など全く役に立たない。でも快速は通常通り運行。さすが東洋一のファンキー・トレイン(クレイジーケンバンド)。既に運休していたJRのホームを「だらしないねえ」と見下し、じゃあ、ぼちぼち酒買って、あとクラゲのDVDを探してから早めに帰ろっかなー、と思いながら横浜駅の改札を出たら、またまた凄まじくドバドバの雨漏り。もうね、漏ってるんじゃなくて降ってるの。なんでどの駅もこんなに漏れるてんだよ京急は。で、なんでか通行人がみな、必死に清掃する駅員たちを大きく取り囲んでバシャバシャと携帯で写真を撮っておる。その雨漏り清掃をバックににっこりVサインして写真撮ってるお姉ちゃんまでいる。そのVはナニに対するどういうVなのだ、寄せ上げブラの姉ちゃんよ。なにかの罰ゲームなのかこれは。
構内に「京急線と地下鉄以外は全線運転を見合わせております」とアナウンスが流れるのを聞きながら、余裕の顔で食材や酒を買い込みDVDを探す。駅ビルから地下街へ抜ける通路は既に閉鎖され、相鉄線に至っては電車どころか相鉄ビルまるごとシャッターを閉めていた。弱い、弱いんだよ相鉄。以前首都圏に大雪が降ったとき、次々と電車が運休するなか、最後の最後まで走り続け、とうとう脱線して運休した京急のハングリーさをちょっとは見習いなさい。
クラゲDVDは発見できなかったが、体調も良くないので早めに切り上げて改札に向かった。ら、京急、運休してやんの。ちょっとチョーシくれすぎましたかね(苦笑)。しかたなく地下鉄まで歩く。が、考えてみると、JR/京急/東急側から地下鉄側に行くには、相鉄ビルを通るんだよね。さっきシャッター閉まってたとこ。...えーと、じゃあ、地下街経由だ。いや、地下街も全部シャッター降りてたね。この暴風雨の地上に出ろってこと?うーん。
買い物袋を色々ぶら下げたまま右往左往していたら、1箇所だけ地下街のシャッターが半分開いていた。ひみつのいりぐちだ。既に地下街の店舗は全て閉店してる中、とにかく地下鉄を目指して歩く。うまい具合に地下鉄に抜けるルートだけは開いている。んだけども、歩いてる俺を煽るように、どんどん地下街の照明が落とされていく(笑)。生ドラクエダンジョン脱出劇。こえーよー。
やっと地下鉄のホームに降りたら、そこはまたまた人の海。考えてみればその早じまいをした相鉄に乗り遅れた連中はみなここに来るんだよ。疲れた体を引き摺って改札に戻る。パスネットで入場しているせいで自動改札を出られない。駅員改札は長蛇の列だ。面倒なのでエラー音無視で自動改札をこじ開けて出る。
別にあわてるこた無え。いつも歩いて帰ってる程度の距離で、深夜にタクシー乗っても3千円程度じゃん。タクシー乗り場に行ってみると、行列は駅前エリアの端まで続いていた。端まで行って並ぼうか考えていたら、怪訝そうにこっちを見るおっちゃんと目が合った。おっちゃんの後ろには今来た方向へずーっと行列ができていて、その、あれ?

俺「おじさんさ、もしかして、ここ(端)の、続き?」
おっちゃん「続きもなにも、最後尾は折り返して駅のずっと中までいってるよ」
俺「はあ!?」
おっちゃん「(大笑)」

確かにみなとみらい線のとこまで続いてるよ。駅の構内では疲れきった家族連れが子供をなだめ、友達みんなで来たらしい若い子は崎陽軒のスタンドに群がってシウマイ弁当を次々と買い、地べたに座り込んで食っている。いつもそれをやっているホームレスは追い出されて不機嫌なのか、黙って濡れちぎれた雑誌のページを拾い集めていた。京浜東北線に乗り入れている横浜線だけが運行を再開したとアナウンスが流れるが、直後に京浜東北線のホームは停電しているから入るなと注意が流れる。どうやって乗るんだよ。ダッシュ?猛ダッシュ?
もう開いている店はほとんどない。濡れていて座る事もできない。観念して最後の望みのバス停まで歩く。しかしまあ、「バス乗った事ないからわかんない」だの「これ大船行かないの?」だの「このバスには乗らないけど次のに乗るからここをどくのは嫌だ」だの、揉める連中の多い事。おとなしく順番を待ってたら乗れやしねえ。「そのバス乗りまーす」とガンたれてなんとか乗り込み、やっとバスのエンジンがかかったところで、先に後部席に座っていたお姉ちゃんが人酔いして「お、降ろしてくださあい」と悲鳴をあげて降りてった。かわいそうに。
やっと近所まで戻り歩いて帰宅。電車は相変わらず運休のまま。どのバス停にもまだまだ行列ができているけれど、よく見れば夜空はもう雲が切れかかっているじゃないか。まったくついてないね。疲れて本にも酒にも手が付かないまま寝てしまった。