レコードとカツ丼

喉絵さんと飲む。第一話。

「こないだ、Bっぽい子が試聴しにきて、ちょっと行儀が悪くてさ、周りも迷惑してるっていうか」
「ふんふん」
「で、『あ、これ試聴で』みたいに言われたんだけど、私も腹立つから『はあ』っつって、ちょっと邪険に返事してたの。そしたら『あんた、その態度なんなんだよ』って言われて喧嘩になっちゃって」
「わー」
「途中で『いや、他のお客さんもいらっしゃいますから、ちょっと静かにしてください』って言ったら余計怒り始めちゃってねえ」
「うんうん。それでどうしたの」
「あったま来たんだけど、冷静に『こういうことすると、他のお客さんも当然迷惑ですよね、あとこれも、他の人が困りますよね、』って、ひっとつひっとつ、説明していったら、最後に『ああ、わかったよ。俺が悪かったよ』って言って」
「お、落ち着いたんだ」
「『でもさ、オレはな、』」
「ん?」
「『オレはこの店が好きなんだよ!!』って言われた」
「(大笑)なんでそうなるんだよ」
「他のお客さんも今まで目を逸らしてたのに、みんなびっくりしてこっち振り返って見てるのよ(笑)」
「わはははは。...まあ、Bの人達って、すんごい不器用だけども、礼儀とかは基本ちゃんとしてるんだよね。上下とか」
「そうね。あと、帰り際に『試聴、どうもありがとうございましたっ』っておじぎされたこともある」
「なははは。偉いなあ」

第二話。

「以前、お客さんとの連絡行き違いで揉めたことがあってね。私が休み明けに行ったらすごい剣幕で怒鳴り込んで来てさ、『おまえらいいかげんにしろ、訴えるぞ』って」
「おおお」
「どっちも悪くないただの行き違いなんだけど、説明しようにも、もうアツくなっちゃって店の住所とか控え始めてねえ」
「やばいじゃん」
「だからすっごい考えて、落ち着いて、『お客さん、』」
「は、はい(笑いを堪える)」
「『私も、よく、自分で中古レコード屋にいくんです。だから、もし私がお客さんの立場で、同じことを店にやられたら、すごい辛いと思うんです』」
「(笑)」
「『それ、すごくよく、わかります。』って言ったら、感激してくれたみたいで『...ああ、わかったんなら、もういい』って帰ってくれた」

がはははは。あんた、ヤマさんだ。中古レコ界のヤマさんだ(笑)。