昨日の夢

自分の家に帰ったら、レコードの鑑賞会をやっていた。部屋の中程に座った階下の中古レコード屋の店主が、入口に立った俺をちらっと見て、また雑誌に目を戻す。たくさんの真面目そうな客が靴を脱いで、安っぽく古い、薄暗い居間の床に直接座っている。古い録音らしい、エジプトだかどこだかの歌と弦楽器が流れている。それなりの再生音量なのだけど、ヒスノイズに負けそうなくらい録音が小さい。
慣れているので何も言わず、皆の邪魔をしないように部屋の中央あたりのスペースにあぐらで陣取る。客は内気なのか、ソファもあるんだから座ればいいのに、皆決まって壁や棚やソファを背にして床に腰を下ろす。だから必ず部屋の中央が空く。店主から、他人が住んでいるから失礼のないよう言われるのかもしれない。その癖、座った足は投げ出したままで、俺に当たってもまったく無視だ。邪魔臭い。
暇なので雑誌でも読もうと、棚を覗いたが見当たらない。「すいません」と小声でいいつつ、腰をかがめて客の足を跨ぎ別の棚までたどり着いても、やっぱりない。また跨いで戻る。曲が終わり、店主が小さい声で今の曲の説明をしている。拍手するような曲じゃないからなのか内気なのか、皆黙ったままで、うなずきもしない。
ここの1階はやはり古い店を居抜きで使った中古レコード屋で、裏手にもう一軒、同様な趣味の雑貨屋がある。この部屋はそのレコード店に入って右の階段を上った2階にある。鑑賞会は1階の店にくる客を呼んでレコード店が定期的にやっている。部屋にあるソファやちゃぶ台などは店主のものだ。俺は自分の本や服と小さい棚だけ持ってここに越した。入居前にはこういう会を開催するからと事前説明があって、そうわかっていればそれほど抵抗はない。
また雑誌を探しているうちに会が終わったらしく、皆黙って一人ずつ、細い作りの階段を下りていく。客も店主も挨拶どころか互いの顔も見ない。ふとそばの目覚まし時計を触ったら、ベルのスイッチが入ったままだった。朝一度止めて、ちゃんと切らずに出てしまったらしい。時計屋でとにかく一番うるさいヤツを選んで買ったものなんだが、鑑賞会の間に鳴らなかったんだろうか。
皆出ていった後に入り口の方を見ると、階段を間違えて3階へ上ったらしい若い男が黙って降りてきた。こちらを見ずにそのまま1階へ降りていく。事前に聞いてくれりゃ教えるのに。そういえば、ここに越してから3階を覗いた事がないのに気がついた。


ってところで目が覚めました。鑑賞会はともかく、ソファによくあるビーズを編んだもの(なんつーのアレ?)がかかっていたり、ディティールがなかなかだったのだけど、こんな話ってどっかにあったかねえ。なにかの映画かなあ。