ひこうき

相変わらず、この時期は、そういうのが、ね。いやーんあたし別れたくないわーんと、彼氏と離れて手荷物チェックゲートに入るが

  1. びー、あれー、あたしなんでー、と思ったら、ブーツの上にアンクーレットーがありましたー
  2. びびー、えー、またひっかかるのー、意味わかんなーい、って警備員さんにすがるので、ひとまずそのダウン脱いでくださいと言うと、あらあら、なんですかその酸っぱい胸元にあるサングーラスーは、いやーんこれカレシーにもらってー
  3. で外して
  4. びびびー(やはり)

という娘がいるので、なかなかヒコウキー(お、ロシア人ぽいね)に慣れない人は大変であるが、その中でもこいつは特に馬鹿っぽい。あきれかえって目を逸らし、次の客に目をやる。20代くらいの男性の若者でいらっしゃるが、その意味わかんない娘にあきれていた警備員(大変ご苦労様です)が、既に、さらに冷めている。
「あの、そのネックレスも外していただけますか」
「あ、これすか」それだ。それなんだ。
...外す。
...外す。
...また外す。
何個あんねん。
ゲートの向こうでさっきしょんべん臭い小娘に疲れてた警備員が、更に険しい顔でゲートをこえて、こっちに来て。

「あのー、お客様、ネックレスと一緒に、その後ろポケットの、財布もお願いします」

お前らなあ、書いてあることやアナウンスがあることくらい、やっとけや。この年末に。もう搭乗始まってんぞ。思わず

「この田舎もんどもが、殺すぞ」

と毒づいてしまったら、前のおじさんが青くなって、体中のポケットをまさぐり出した。すでに小物入れには財布なんかを全部入れてるのに。ごめんねおいちゃん。