昭和は遠くなりにけり

backbeat2005-05-29

年に数回のテレビの日。なんとなくNHKアーカイヴスをつけっぱなしにしてたら、おもしろいことおもしろいこと。
1本目が土佐のカツオ一本釣り漁船の話(1982)。主題はその頃カツオ漁に導入され始めた巻網漁船の大資本型ブルドーザー根こそぎ漁と個人型一本釣り漁の関係。なんだけど、それとは別に(別ですいません)、出てくる船主や漁師が実に漁師。潮焼けしたイイ顔にタオル巻いて。声ガラガラで。甲板でどんぶりもって潰したカツオをニンニク醤油どぶづけで飯食って。漁が始まれば血走った眼でカツオ放り投げて。「魚群探知は最新の電子機器によるもので」とNHKらしいナレーションが乗っかるが、どっから見ても荒くれた漁師が数人あぐらかいてくわえタバコで座ってる狭い船室が紹介される。一人の横にある、ガラス面に方位が印刷されたソナーの中の電球が光って音が鳴る。ピコーンピコーン。途端に親分の漁師がだみ声で「おらいくぞゴラア」と号令すると船上は喧嘩腰の鉄火場に。すんばらしい。よくほら、「マグロ漁船にでも乗ってこいや」って言い方があるでしょ。あれが実感できます。カツオ漁船は割と早く戻るんだけども。
2本目は、好き者の福岡のカメラ商が手に入れたクラシック・カーで福岡から東京までドライヴする話(1970)。実に実にいかにもな、真っ青なブレザーなんて着てしまうヒゲの男がハンチング帽に襟のでかいコートでご登場。これまたNHKスタイルのしゃれらしく、ずーっと車を擬人化して「今日の彼女はご機嫌斜め」なんて酸っぱいナレーションが絡まるものの、出発後に関門トンネルを抜ける時には、カメラ商はハンチングの下にガスマスク着けなきゃならんし(よく持ってたなあ)、農道を走ればトラクターより遅いと止められ、エンコして、その夜はコテコテの按摩さんに揉まれて熟睡のカメラさん珍道中。NHKらしくこっちにもそれなりの主題があって、どうやら交通地獄(古い言葉だ)に対するひとつのアンチテーゼらしいというのがナレーションの言葉端や編集から汲み取れました。おかげで撮られているカメラさんの洒落た気分は台無しになっただったろうと思いますが(苦笑)、走っていく道路の横に積み上げられた廃車の山をアップに撮って、途中で歌が挿入されます。

ああ、東京、横浜、公害〜公害〜ブルース〜

こ、これは...!
昭和歌謡」なんてジャンルは、昭和生まれにとって実はあんまりピンとはこないところも結構あるんだけど、特にニュー・ミュージック以降とかね、でもこういうのを見るとやっぱり、もう昭和はずいぶん遠くなったんだなあとか、あの頃から見れば、ずいぶん洗練というよりは殺菌されちゃった気がするなあ、この何年かは、なんて思いながら、結局最後まで観てしまいました。
ちなみに次回は広島の原爆関連2本だそうですから、上記のようなノリとはだいぶん違うとは思います。